ピロリ菌のチェックは大事です
☆ピロリ菌とは
・正式名はヘリコバクター・ピロリといい、1980年代に発見されました。
・胃の中に住み着き、胃の壁を傷つけます。
・主に幼年期(4~5歳ごろまで)に感染すると考えられています。
・感染経路は経口感染です。井戸水、便・嘔吐物、子供への口移し、などからの感染が考えられています。
・上下水道が設備されていない(衛生環境が悪い)ような国や地域で感染率が高くなっています。
☆日本人のピロリ菌感染率
上下水道が十分完備されていなかった時代に生まれ育った世代の人のピロリ菌感染率は約80%前後と高いのですが、衛生状態のよい環境で育った若い世代の感染率は年々低くなっています。
それでも、現時点において50歳代以上の70%近くがピロリ菌に感染していると言われています。
ピロリ菌は様々な病気に関連することが知られていますが、日常臨床で問題になることが多いのは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因菌になること、萎縮性胃炎となり胃癌が発生することです。
☆どうして胃潰瘍や胃がんになるの?
幼年期に胃に感染したピロリ菌は、長い年月をかけて胃・十二指腸に炎症を与え続け、ストレスなどをきっかけに胃・十二指腸潰瘍をきたしたり、長期間持続する炎症のため胃粘膜が傷み(萎縮性胃炎)、傷んだ粘膜から胃がんが発生するといわれています。
☆ピロリ菌除菌治療を行うメリットは?
胃・十二指腸潰瘍の1年以内の再発率は70%といわれています(継続した胃薬の内服をしない場合)。ピロリ菌除菌を行うと、再発率が2%と著明に低下するといわれており、潰瘍出現抑制効果があります。
ピロリ菌除菌を行うと胃粘膜の傷みの進行が抑制されることにより、胃がん予防効果が確認されています。特に50歳以前と若い年齢時に除菌を行うほど高い胃がん予防効果を期待できますが、60歳代でも除菌を行うことでその後に胃がんが出現する確率が1/2~4/5に減少するといわれています。
慢性的な胃痛、胃もたれの原因として、ピロリ菌感染も原因の一つとしてあげられます。ピロリ菌除菌することにより、これらの症状改善効果が期待できます。
☆ピロリ菌の感染診断法(保険診療の場合)
まず胃カメラにて、ピロリ菌に感染している胃に見られる萎縮性胃炎の有無などをチェックします。ピロリ菌に感染している可能性が高いと判断されれば、採血などでピロリ菌感染有無の検査を行います。
☆ピロリ菌の除菌治療
抗生剤2種類と胃薬1種類の計3種類のお薬を1日2回朝夕食後、7日間内服してもらいます。
治療の2〜3ヶ月後、必ず除菌がうまくいったかの確認検査が必要です。
除菌成功率は、1回の治療で約70%、2回目まで治療を行って約90%です。
除菌治療薬の内服にて、3割弱の方に下痢・軟便、1割の方に味覚異常・舌炎などの口腔症状、皮疹などの副作用が出現するといわれていますが、副作用が軽度の場合は内服治療の継続可能です。